この章ではMSAPの補助を受けているマグネット・スクールでは人種差別撤廃がどのくらい進んでいるのかをみていく。
その前に、MSAPが定めている人種差別撤廃の目標段階について示しておく
○MSAPの人種差別撤廃の目標の段階と達成状況
1:Reduce 66%
Minority isolation(マイノリティーの入学者数が全体の50%以上を占めている状況)を 縮小していこうとしている学校で、今後はその割合低くしていこうとしている学校
2:Eliminate 10%Minority isolationをなくして行こうとしている学校で、その割合を今後は50%以下に していこうとしている学校
3:Prevent 6%Minority isolationを抑制した(マイノリティーの入学者数を50%以下に抑えた)学校で、 今後もその状況を保つよう目指す学校
※2000年のデータでは調査対象校(295校)の47%(139)が何らかのかたちで人種差別撤廃の目標を達成している、 という報告がなされている。 2001年のデータでは2調査対象校(289校)の約80%がMinority isolationの状況を縮小することに成功している、という報告がなされている。 2000年から継続して補助金を受けている学校ではそれぞれの目標を達成している。
しかし、2003年に出た最終報告では…
「MSAPから補助金を受けている学校における人種差別撤廃の効果は小規模なもの(modest)である」
○57%の学校がMinority Group Isolation(入学者の50%をマイノリティーの生徒が占めている:MGI)の状況を抑制・解消・縮小(reduce,eliminate, prevent)することに成功している。
残りの43%は成果をあげていない。
※MSAPの主な目標は学校における人種差別の状況を抑制・解消・縮小(reduce,eliminate, prevent)することである。
各段階における割合 reduce:eliminate:prevent=77%:16%:8%
↓
調査の対象となった学校の入学者の50%をマイノリティーの生徒が占めている。
・自主的にMGIの解消を行っているマグネット・スクールのほうがMSAPやほかの機関からMGIの解消を求められているマグネット・スクールよりもMGIの解消に成功している。
(自主的に行っている学校:強制されている学校=60%:53%)
・各学校段階におけるMGIの解消に成功している割合は小学校60%・中学校54%・高校48%
・全校生徒にマグネット・カリキュラムを提供している学校のほうが一部の生徒にしかマグネット・カリキュラムを提供していない学校より、MGIの解消に成功している。
(前者:後者=59%:49%)
MGIの解消については大きな効果は見られない
↓
☆解決するにはどうしたらよいか
報告書の中ではMGIの解消に成功している学校における成功の要因を地方教育当局や学校の特徴を 次のように整理している
《地方教育当局での背景》
・入学者に占めるマイノリティーの生徒の割合を変える
・白人の生徒の割合を変える
・マグネット・スクール以外の学校へ生徒を入学させるようにすることも視野に入れる
(例えば、MSAPの補助を受けていないマグネット・スクールやチャーター・スクール、私立の宗教・宗派立学校、
など
)
《地方教育当局におけるMSAPプロジェクトの特徴として》
・人種差別撤廃の計画の違い(自主的にやっているか、地方教育当局などから強制されているか)
・様々なプログラムが複合的に組み合わされていること
《学校の特徴》
・教師一人当たりに対する生徒の数の割合
・通学区(その学校の通学区に住んでいる生徒には学校へ通う優先権を与える)
・いろんな人種の生徒を混合する(学校の中である一つの人種に属する生徒の割合が50%を越えないようにする)
・貧困のレベル(free lunch やreduce-price lunch の生徒の割合がどのくらいか)
・学校の雰囲気などの学校の特徴(生徒が学校から離れたり問題行動をしていないか、職員の間に協働意識が生まれているか、
教師の専門性を高めるように学校で努力がなされているか、学校の管理や学校行事に保護者が参加できるようになっているか)
《学校MSAPプログラムの特徴》
・魅力的なカリキュラムを全校生徒に提供しているか
・プログラムの実施が地方教育当局の基準に基づいているか(州内統一テストの結果や学問的な記録に沿っているか)
・人種差別撤廃の目標をどこに定めているか(reduce・eliminate・preventのどれが目標か)
・どれだけの期間補助金を受けているか