以上述べたように、判例からアファーマティブ・アクションに対する考え方が変容したことがわかる。 そこで具体的な対象として選定したカリフォルニア大学の入試制度におけるアファーマティブ・アクションの変遷を述べていく上で、 カリフォルニア州の高等教育システムの概観を把握しておく必要がある。カリフォルニア州の高等教育は、 @UC: University of California System、ACSU:California State University System、 BCC:Community College Systemの三つの階層に分類されている。本レポートで対象とするのはUCとする。 UCは最もレベルが高く、修士、博士の学位まで目指すエリート教育と大衆教育を兼ねる専門家教育大学、研究者養成大学である。
アメリカの大学では、個々の大学で行う個別学力検査は基本的には存在せず、入学者選抜の評価で最も重視されるのは、 GPA(Grade Point Average)25 と、SAT(Scholastic Assessment Test)26 あるいは ACT(American College Test)27 の結果である。UCに出願するためには、各高校の上位1/8(12.5%)に入っていることが一つの条件であり、これは、 カリフォルニア州が定めた高等教育マスタープランに定められている。これは大学及び州の教育システムが高校での成績、 すなわち高校での教育を重視する姿勢の表れでもある。
註25 GPAとは、高校の調査書のいわゆる評価点平均に相当する。
26 SATとは、大学や政府とは独立した民間非営利団体が実施する総合学力試験で、高校のカリキュラムに準拠しない選抜性の高い大学の試験と言われていたが、近年では大学の大衆化に伴い、ACTと類似傾向にある。
27 ACTとは、大学や政府とは独立した民間非営利団体が実施する総合学力試験で、高校での教科に沿った試験で州立大学などの大衆向きである。
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