『危機に立つ国家』では、「教職に関する調査の結果」の章で、教員の学力の低さや、教員の処遇の悪さ、数学・理科の教員不足の状況を指摘している。そして、教員養成を改善し、教員の処遇を良くし、教職の専門性を高めることが必要であるという勧告をしている。1980年代に発表された教育改革に関する提言や報告書は、アメリカの教育の問題点の1つとして、教員養成課程進学者の学力の低さと、数学や理科などの教科担当の教員の不足を指摘した。アメリカでは、教員養成、教員免許状に関する制度も、州が管理している。このため、州は1980年代初めから優秀な教員の確保と質の維持・向上のために、養成課程の卒業要件の厳格化、教員免許取得試験の導入、終身免許状の廃止などの施策を講じている。また、州や学校区は、給与水準の引き上げなど優秀な教員を確保するための処遇改善も合わせて実施するようになった。1980年代教育改革において、教員養成プログラムの強化、教職志望学生に対する能力試験、インターン制度、教員免許取得の代替ルートの設定、メリット・ペイ、マスター教員制度、免許更新制などの様々な教員の資質向上策が提案され、1990年代にかけて実施された。90年代の半ばからは、専門職の上級レベルの資格を用意するという動きが強まった。
2、アメリカの教育制度と改革の流れ4、NCLB法における教員の資質向上