5、オルタナティブな教員養成への注目

 NCLB法で定める教員の高度な適格性とは、州の正規の資格を取得することが必須であるとされているが、その取得の過程は問われていない。養成課程についての連邦による具体的な記述はなく、州の裁量に任されており、プログラムは州によって多様である。AFT(the America Federation of Teachers)でも、NCLB法に先立って、オルタナティブな教員資格認定プログラムについて言及を行っている。十分な訓練や指導・助言を得られずに学校現場で働くことになるオルタナティブな教員資格認定制度において、適切な援助が必要であることを指摘した。

 これにより、連邦政府は、オルタナティブな教員資格認定プログラムについて4つの用件を加えた。

  1. 事前研修の段階から、実際の学級運営に関する継続的かつ集中的な実践的研修が行われる機械を十分に設けること。
  2. 実際に教員としての勤務が行われるようになった後も、体系的かつ継続的な指導・助言を含む研修が用意されていること。指導教員(mentor)による指導・助言が十分に行われること。
  3. 正規の教員資格取得までの期間を3年以内とすること。
  4. 各州が、プログラムの内容について明確な基準を示し、各プログラムに対して適切な指導を行うこと。

 以上の要件が加えられ、具体的には、プログラムにおける各州の研修の充実が求められている。また、オルタナティブな教員資格認定プログラムは、「他の職業からの中途転職者、一般教養を専攻した大学既卒者、または軍除隊者を対象とする傾向」があり、教員候補者への十分な指導・助言が行われなければならないとしている。

 小野瀬は、NCLB法の目指す高度な適格性を有する教員の配置に関する施策についての議論を整理し、連邦政府が示すこの施策の特徴を挙げている。まず第一に、「教員資格要件の緩和及び教員資格取得のための各種試験の合格水準の引き上げによって高度な適格性を有する教員の配置が達成されると捉えるだけでなく、正規の資格認定を取得する前に研修等の充実を含む適切な支援を行うことで、NCLB法における高度な適格性を有する教員の配置が目指されているというねらい」が見られるとしている。第二に、「オルタナティブな教員資格認定制度と従来までの教員資格認定制度は、正規の資格認定を取得するという意味で、同格であるとみなされる」という点である。そこで、研修等の充実を含む支援制度の構築という場合に、研修の具体的な内容などをどうするのかが今後問題になってくるだろうと指摘している。

4、NCLB法における教員の資質向上

6、オルタナティブな教員養成プログラムの実践例―テキサス州ヒューストン独立学校区の実践―