6、オルタナティブな教員養成プログラムの実践例

―テキサス州ヒューストン独立学校区の実践―

 この章では、小野瀬善行の論文(3)をもとに実践例を見ていくことにする。

 テキサス州ヒューストン学校区は、経済的な援助を受けている児童・生徒の割合や、人種的マイノリティの児童・生徒の就学する率が極めて高い。そして、人種ごとに学力的な達成度の格差が存在している。また、言語的に配慮が必要な児童・生徒も多数就学している。しかし、教員の現状はこのような実態をカバーできるものとはなっていない。そこで、ヒューストン学校区では、1985年からオルタナティブな教員養成プログラムを導入している。これにより、一定の要件を満たし、公立学校において1年間のインターンシップを終了したものに対し、免許状を発行する制度が可能となった。深刻な教員不足を高い質を有した旧汚職印で充当していくことを目的としている。

 プログラムの流れとしては、まず、参加者は「テキサス州における一般教養に関する諸スキルプログラム」試験を受験することが求められる。それによって参加が認められた後、インターンは事前研修(Pre-Assignment Training)に参加する。この事前研修では、全体のオリエンテーション、教室観察、セント・トーマス大学で教職に関する専門的な講習を6〜9単位分、テキサス州のカリキュラムに関する講習が行われる。その後、実際に教壇に立って教育に従事しながら継続的な研修(On-Going Training)に参加する。継続的な研修では、学校内での講習と、セント・トーマス大学において開講される講習である。学校内での講習では、つき一回の割合で、指導教員(mentor)もしくは他の教員からの指導を受ける。さらに、インターンシップの期間中はプログラムの管理主事から教授方法などについての指導・助言を受ける。最後に、インターン期間中に、「テキサス州における教職基準試験」を受験し、基準点を満たすことが求められる。

 成果としては、導入以来、2003年度までに6000名がこのプログラムに参加しており、このプログラムを修了して初任者教員になる者が、大学における伝統的な教員養成課程を修了して初任者教員となる者の数を上回っている。オルタナティブな教員養成課程が、メインストリームとなりうるという予測もされている。また、このプログラムには、人種的マイノリティ、とくにヒスパニックが多く参加している。もともとは、中等教育段階における理科及び数学の教員不足の解消が目的であったが、結果としては、初等教育段階におけるバイリンガル教育を含めたゼネラリストを多く輩出している。

5、オルタナティブな教員養成への注目

7、ミネソタ州の教員の資質向上策―初任5年の指導教員プログラム―