チャータースクールやマグネットスクールの選択を含め、公立学校の選択が行われる場合において、親たちはどのような情報を求めているのだろうか?
Schneiderらによる2つの先行研究を手掛かりに考える。
・M.Schneider, J.Buckley 2002※1
この研究は、DCSchoolSearch.comというサイトを用いた、学校選択の際の親たちの情報収集についての研究である。このサイトでは、ワシントンDCにある公立学校に関する情報を提供している。このサイトを利用する前に、その利用者は自分のプロフィールについての質問に答える仕組みになっている。
このサイトの開始にあたり、ワシントンDC内の地下鉄、バス(特に低所得者層が居住する近辺を走るもの)、日用品店やスーパーマーケット、テレビやラジオなどのメディアで広報され、インターネットにアクセスする方法を教える「ホットライン」が開設された。
これだけの広報がされながら、このサイトを利用した人は、ワシントンDCの学歴の人口比と比べて高学歴の人の割合が高かった。
親たちがそのサイトに来て最初の5つの行動で、学校についてどんな情報を得ようとしたかを明らかにした結果、学生の人口統計的特性や、学校の所在地などの情報を得ようとする割合が高い(それぞれおよそ30%、25%)ことが確認された。試験の成績、基本プログラムなどは20%弱であり、学校の施設や職員の情報については5%程度しか収集しようとする努力がなされていなかった。
・M.Schneider, P.Taske and M.Marschall 2000※2
この調査は、教育レベルや人種が、どこから選択する学校についての情報を得るかということにどのように関連するのかを調査したものである。1995年の春に、ニューヨークのCommunity District 4とCommunity District 1、ニュージャージーのMontclair Public SchoolsとMorris School Districtにおいて行われた。
ここでは親たちの得ようとする8つの情報源を、3つのカテゴリーに分類した。
・社会的情報源…友人、他の親
・学校による情報源…学校からの回報、教師、スタッフ
・正式な情報源…マスメディア、政治家、コミュニティセンター
また、親たちを教育レベルと人種によりそれぞれ4つに分類する。
・教育レベル…高校中退、高校卒業、大学中退、大学卒業
・人種…白人、黒人、ヒスパニック、アジア人
教育レベルが低いほど数多くの情報を求めようとし、教育レベルが上がるにつれて得ようとする情報源が少なくなる。
教育レベルが低いほど、学校により提供される情報やメディア・政治家などが提供する情報を利用する割合が高く、社会的情報源(つまり友人や他の親)による情報収集は少なくなる。逆に教育レベルが高いほど社会的情報源に依存する割合が高まる。
人種で見ても、ヒスパニックやアジア人、黒人などのマイノリティは得ようとする情報源が多く、白人では少ない。
またマイノリティは学校が提供する情報に頼る割合が高いが、白人は社会的情報源に頼る割合が高い。
これら2つの研究から言えることとしては、
・親たちは選択すべき学校のパフォーマンスより人口統計的特性、つまり児童生徒の社会的経済的背景を重視している。学校の所在地が重要視されることについても、その所在地により学校内の人種比率がある程度予測できるからではないかと考えられる。
・教育レベルの低い親やマイノリティの親の持つ社会的情報源は信頼性が低く、また情報ネットワークも小さいため、教育レベルの高い親や白人の親に比べて学校についての情報をより広く探すと考えられる。
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