教育制度論演習
人間学類 高岡克次



[Voucher Program(バウチャー制度)とは]

・経済学者Milton Friedmanの提唱したモデルに基づいた教育制度。

・教育当局が学校教育を受けるために必要な経費を補助するvoucher (証票・教育券)を交付し、親が学校選択の際に志望した学校(私立学 校を含む)にそれを 提出し、学校はそれと引き換えに児童・生徒に教育の機会を与えるとい うもの。

[Voucher Program施行の背景]

・公立学校の運営資金の大半は住宅などの固定資産税をもとに徴収する 学校税による。

→白人中心の富裕層が多く居住している郊外の学校区は運営資金が潤沢 になる。
→教育環境の整備、優秀な教師の採用、質の高い教育を施すことが可能。
→黒人・マイノリティーを中心とした貧困層が多い都市部の学校区では 教育環境の悪化、教師のレベル低下、モラルの低下、学校の退廃化を招く。

→親による教育機会の選択権を尊重するとともに、市場 原理に基づく学校選択制度により学校教育の質の改善を図ることを目的に Voucher Programの導入が検討される。

[Voucher Programの問題点]

問題点1:再生産性

・私立学校の大半は選別入学を前提としている。
→元の学力が重視されるため貧困層に与えられるチャンスが少ない。機会均等 には結びつかない。

・私立学校や宗教学校(アメリカ合衆国における私立学校の約7割は宗教学校) にはVoucherで賄えない部分を追加授業料として家庭から徴収することが 許されている。
→親の選択権が階層によって決定付けられてしまう。

問題点2:政教分離の原則違反

・1791年連邦議会において憲法に修正第1条を加える。

「連邦議会は、法律により、国教の樹立、信教の自由、言論または 出版の自由、平和的集会、苦情の救済を求めて政府に請願する人民 の権利を制限する法律を制定してはならない」

→特定の宗教団体への補助及び宗教団体間に優劣をつけうる補助を禁止。
→公費による宗教系を多く含む私立学校への 就学補助は合衆国憲法修正第1条に抵触。




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問題点の概要
アメリカ合衆国の貧困層
再生産性を含む問題
問題に対する諸対策
私見