第3章 カーネギー報告


(1)カーネギー報告とは
 約400の勧告を盛り込んだ22の報告書からなるカーネギー報告を生み出したのは、カーネギー高等教育審議会である。 審議会と言ってもカーネギー高等教育審議会は政府とは全く関係を持たないカーネギー教育振興財団という民間の研究機関であった。 この審議会は1968年から1972年に630万ドルを投じて、アメリカの高等教育全般を対象として検討を行った。 本章では審議会の第一報告書である「高等教育の質的向上と機会均等 新しいレベルの連邦政府の責任」について検討する。

(2)カーネギー第一報告書の基本的な考え方
 この報告書には奨学金に関して8点の勧告がある。それらを提示する前に、これらの勧告の前提となる考え方を提示したい。
 カーネギー高等教育審議会は高等教育に対する連邦の教育援助の当面の手段として以下のものを挙げている。
@給費奨学金と貸費奨学金は教育の機会均等という国家的目標のために生徒個人に与える。
A機関援助は在籍する学生全てに補助を与える形となり連邦政府の負担が増大する。また、高等教育機関への国家介入を増大させる。
 このようにカーネギー高等教育審議会は「教育の機会均等」という目標を達成するために機関援助より個人援助という方法を提示している。

(3)カーネギー第一報告書の勧告内容
 第一報告書にある勧告の中で奨学金に関するものを5つ取り上げる。
@教育機会給費奨学金
 教育機会給費奨学金は以下の条件で学生の必要度に応じて支払われるよう、その規模を拡大させ、充実させるべきである。
@)全ての学生に対して、彼らが選択した高等教育機関に通うために必要な分の経済的援助を行う。
A)給費奨学金の給付期間は学部段階の4年と大学院段階の2年に限られる。

A教育機会補助給費奨学金
 教育機会給費奨学金を受けている学部学生や、それに加えて他の給費奨学金を受けている学部学生の中で必要度が 大きい者に対して与えられる。しかし、その規模は教育機会給費奨学金受給者の半分を超えない程度である。

B高等教育機関の奨学金基金
 全ての高等教育機関に対して教育機会給費奨学金の合計額の10%を奨学金基金として振り分ける。 それは高等教育機関が独自の必要度の定義を決め、学生に与えることができる。

Cワーク・スタディ・プログラム
 高等教育機関が学部学生をパートとして雇い、連邦の基金をその賃金として学生に支払うことができる。 また、学外の教育施設でも雇うことができる。

D貸費奨学金について
 貸費奨学金は学生の必要度に関わらず、的確と判断されれば、全ての学生に支給される。 貸費奨学金を支給するコストは支給時のコスト以外連邦は支出しない。 そして、ローンを多く受給する学生が出ないよう、学生生活を維持できる分の費用を給費奨学金とワーク・スタディから給付する。

 注目すべき点は給費奨学金と貸費奨学金の受給要件である。給費奨学金は全ての学生に対してその必要度に応じた額を支給する。 貸費奨学金は支給要件を満たせば全ての学生が受け取ることができる。また、貸費奨学金を多く受け取るのではなく、 返す必要のない奨学金を受け取るように配慮されている点も注目に値する。

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