No Child Left Behind法におけるAYP運用に関する一考察
―フィラデルフィア学校区へのstate takeoverを事例に―

人間学類3年 吉田ちひろ



1、問題の所在
 アメリカの教育の中では、人種問題による「落ちこぼし」、経済格差による「落ちこぼし」など、 さまざまな要因によって生じる「落ちこぼし」を解消するため、1954年のブラウン判決後、 70年代にはカフェテリア方式の導入、1983年に「A Nation at Risk」、 1994年に「Goals 2000:Educate America Act 」などの政策が次々となされている。 そして2002年には初等中等教育法改正として「No Child Left Behind」法(以下NCLB)が成立した。
 このNCLB法では、Title 1 schoolsにはAYP(適正年次進度:Adequate Yearly Progress)の設定、達成が必要とされている。 このAYPが2年連続で達成できない場合は学校選択制度が導入され、3年連続で達成できない場合は学校以外の指導を提供できる制度が導入、 4年連続で学校区の強制介入、5年間達成されない場合には最終的に学校の廃止や教員の配置転換等のリストラクチャリングが実施される。 このリストラクチャリング実施に達する前段階にあたる強制的介入は、学校や学校区にとって 自治権を失うか取り戻すかがかかる重要な段階である。
 ただ、NCLB法の取り組み以前からstate takeoverという形で州に学校区の権限が委譲する手段が取られている。 これは、リストラクチャリングとほぼ同様のやり方であり、 リストラクチャリングの正当性を裏付けるものとして機能している可能性があると考える。
 そこで本研究では、2007年度よりリストラクチャリングが開始されたが、 それらの前例としてstate takeover、中でも、フィラデルフィアのstate takeoverについて、 実際に学校でどのように取り組みが行われたのかを研究する。 フィラデルフィアでは、2001年秋に「友好的テイクオーバー」としてフィラデルフィア学校区へ介入している。 そのstate takeoverがどのような実践をした中でのメリットや問題点を見つけることが、NCLB法のAYP運用に生かせるのではないかと考えるからである。

2、state takeoverへ