第2章:Proposition227をめぐる対立構図

 1996年に、ロサンゼルス統合学校区の小学校にて、ヒスパニックの親たちが授業ボイコットを決行したことを契機に、 二言語教育廃止運動が開始されてから、Proposition227が可決されるまで二言語教育をめぐっては様々な立場からの利害 が錯綜し、政治問題にまで発展した。Proposition227をめぐる対立構図は以下のようになっていた。

賛成派(二言語教育反対)反対派(二言語教育賛成)
主要人物・グループ ・ロサンゼルス教員組合(UTLA)
・サンタ・バーバラ市教育委員会
・ウィルソン州知事(当時)
・保守派の白人
・カリフォルニア教員協会(CTA)
・サンフランシスコ市教育委員会
・カリフォルニア州の民主党及び共和党党首
・クリントン大統領(当時)
・連邦教育省
・ヒスパニックの指導者
主張の要点
・現行の二言語教育プログラムには重大な欠陥がある。

・移民が貧困から抜け出すには、英語能力に熟達している必要がある。

・二言語教育はカリフォルニアに「民族分離主義」をもたらしかねない。

・二言語教育の廃止は移民の子どもたちがアメリカ社会で成功する機会を奪う。

・「英語に制約があるという理由でLEP生徒が教育上不利な状況におかれてはならない」とした最高裁判決に違反する。

・二言語教育の廃止は、異なる文化に対する不寛容を招く。
主張の根拠
・二言語教育プログラムが実施されて30年経ち、多額の政府予算がつぎ込まれたにもかかわらず、 学習成果は上がっておらず、中退率も高い。

・英語のみならず、スペイン語の能力も中途半端なままである。

・二言語教育を受けた生徒の大学在籍者数が少ない。

・英語能力が不十分な子どもとそうでない子どもを分離することになる。

・長期的に見た場合、通常の英語のみのクラスよりも、二言語教育クラスのほうが有効であるという研究成果がある。

・二言語教育は有資格の教師、適切な教材、環境条件が整えば、効果を発揮する。

・賛成派が二言語教育の失敗として提示したデータの根拠は不確かである。

・生徒の保護者が十分な情報を与えられていないため、二言語教育は失敗したという誤解を招いている。

※小林(2008)より作成。

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