第3章:Proposition227採択後の動向


 Proposition227は可決後、1998年8月に法律として施行されたが、一部の学校は施行後も抜け道を使って二言語教育を継続 しているとの批判が二言語教育の反対者からあがった。当時のウィルソン州知事のスポークスマン、ウォルシュによれば同法は 授業を「ほとんどすべて」英語で行うよう規定しているにも拘らず、多くの学区で授業の40%程度がスペイン語で行われている としている。それは「ほとんどすべて」の定義が不明確であるため、遵守基準があいまいになってしまったためであると Terry(1998)は述べているが、その結果、Proposition227施行直後の学校現場では、法律の解釈、制度の運用、教授法をめぐって 一部で混乱が生じ、またカリキュラムや教科書もなく、手探り状態で授業が進められていた。

 1998‐99年度にカリフォルニアの公立学校で、LEP生徒が選択した教育プログラムの割合は、授業は英語で進めるが教員助手 や同級生による母語での手助けなどの配慮がなされる教育プログラムが49%、二言語教育プログラムが12%、特別な言語教育 サービスのない英語による通常のクラスが29%、その他が7%となっている(Bazeley,1999)。なお、1996‐97年度に カリフォルニアの公立学校に在籍していたLEP生徒のうち、二言語教育プログラムを受けたのは約30%であった(Schmid,2001)。

このProposition227の影響はその施行直後の段階で24の州に及び、二言語教育の存続を問う議論・住民投票が行われたが、 2000年アリゾナ州で二言語教育に反対する法案が可決され、その後2002年にはマサチューセッツ州で可決、コロラド州で否決 、というように「どちらが優れている」という一致した見解に到達していないのが実情であり、二言語教育をめぐる論争は 今なお続いていると言える。ただし、その一方で2007年のカンザス、アイダホ両州をはじめ30州が公的な記録、法律、規制、行事などを英語 のみによって行う「Official English Law」を制定するなど、異言語・異文化を尊重しつつも、社会的な流れとして 英語のみに囲まれた環境を重視する動きが広まりつつある。


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