No Child Left Behind法におけるAYP運用に関する一考察
―フィラデルフィア学校区へのstate takeoverを事例に―
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3、フィラデルフィアでの実践とその評価
フィラデルフィアでは、2001年秋に「友好的テイクオーバー」としてフィラデルフィア学校区へ介入している。
この介入は全米でも先駆的で、パラダイム転換をもたらす、政府の改革の実行例であり、同時に都市での教育へ何らかの示唆をもたらすものとして期待されたという。
ただ、「友好的」かどうかには若干の疑問が残る。というのも、1995年にペンシルバニア州長にトム・リッジ(Tom Ridge)が選出され、同時期に新しくフィラデルフィア学校区長になったデビット・ホーンコック(David Hornbeck)は
children Achievingというリフォームプランを遂行していた。これは、強力なアカウンタビリティに基づいての体系的かつ基準が明確であるものである。
このリフォームプランに、ホーンコック自身財政投入の価値があると見込んでいたが、リッジは財政的には学校区の上限は決まっており、
かつあやふやな経営はすでに危機的状況であると判断し、1993年制定の法に則る形で州による支援をすることを決めた。
しかし、支援をしてもchildren Achievingは効果を為さず、州からの追加援助も金銭的補助もおりることはなかった。1998年、リッジの公的コメントにより対立が表面化、
2000年5月、Act16によりフィラデルフィアと他10の学校区の成績低迷を底上げするためState takeover実施が決定した。
そして2000年6月、ホーンコックは辞任する。2001年夏エディソンスクール(Edison School)を営利目的の会社経営に委託する。
その年の10月、リッジは母国のセキュリティの省に長として就任、代わってマーク・シュウェイカー(Mark Schweiker)が就く。
このシュウェイカーが60の低達成校に見られるような経営と同じく中心事務的機能を持ったエディソンスクールの方針を提言したのである。
シュウェイカーの案によって生徒・保護者は高い民主化状況に置かれることとなった。シュウェイカーはまた、教育委員会以上に民主化をさせるため学校改革委員会(School Reform Commission)を設立、
そこにはフィラデルフィア市長ジョン・ストリート(John Street)が任命した者を入れることで、必ず意義のある点を改善していくような「友好的な」構成になっているようだ。
では、実際にどのような実践をしたのか。
初年度(2002-03年)では、”Thin management”を掲げた。
これで、第一に供給者の影響力と説明責任はかなり混乱させられ、そしてその混乱で学校全職員からの支援が受けられると考えた。
第二に、適応(それ以上に改善)しようとする自治においてフィラデルフィアの学校への教育的介入をするだろうと考えた。
そして、2年目(2003-04年)では、学校区と供給者が連携を深め、より強固な土台作りを目指した。
3年目(2004−05年)は、民営化成功の先駆者になることと、役割を発展させることを目指した。
しかし、この取り組みには大きく2点の疑問が提示されている。
それは、
@全てのレベルでのシステムの向上や、協働の仕組みを開発していくことで、どれほど永続的に低達成率の学校を改善できたのか、
A学校運営供給者はできる限りの介入をし、結局フィラデルフィアの最貧困層の子どもたちの学業達成や学校の強化への結果につながったのか、
という2点である。
@については、営利組織へのアウトソーシングが市場の競争をもたらし、永続する教育機会、格差再生産などの問題改善へよい結果をもたらすと考えられていたが、
実際には強硬な手段とはならなかった、としている。アカウンタビリティも果たしたとは言いがたいようである。
さらに、効率的であるかどうかも疑問が残るようだ。Aについては、生徒の成績を追跡することで評価することもできるが、それらを見ても、
学校区が実施したものよりもより早く永続的に低達成である学校の効果をあげたとは言いがたい。
ボルティモアでは、民営化で支持者が約束した以上にもたらしたものがあったのかどうかが広く議論されているようだ。
また、リストラクチャリングの結果に関してのひとつの調査がある。
これはフィラデルフィア学校区に指示し、フィラデルフィア学校改善委員会(SRC)の全ての指導のもと、
66の低達成率の学校の本格的なリストラクチャリングを始めたものの結果である。
それらの学校は会社経営をする機関、大学などの非営利経営の機関、学校区自体で設置された特別なリストラクチャリングスクール事務所(ORS)のいずれかに出される。
ポール・ペーターソンは5年次から8年次における変化のうち、2002〜05年での間をcohort1、2003〜06年の間をcohort2とし、
利益追求の経営をする機関による学校に在籍した生徒とORSに進んだ生徒、学校区の生徒ごとに比較をした。
ペンシルベニアレポートでは、私立校に通う生徒のほうがパーセンテージの伸び比率は高く、従って私立校の方が効果的であると結論付けているが、
ポールはそうだとはいえないとしている。評価の仕方等で変わる点や、私立校の優勢を規定することで個人のバックグラウンドの再生産を生み出し、
個人の努力も過小評価しかねないとしている。
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