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2025.05.02 カウンセリング学位プログラム

私のChapter 2―修了生から,受験をお考えの皆さまへ

この春に本学位プログラムを修了された35期修了生の髙尾あゆみさんより,受験に至るきっかけ,大学院生活,そしていま修了後のことなどについて,沢山の思いをお送りいただきました。

受験をご検討されている方もそうでない方も,是非ともご覧いただければ幸いです。


カウンセリング学位プログラムに関心をお寄せくださった皆さまへ。

優等生だったわけではない一社会人大学院生の拙い感想ばかりですが、次の一歩を迷うどなたかの背中をそっと押す一助になれば幸いです。

受験から入学まで

私は歯科衛生士養成校で教員として、臨床実習や試験に追われて体調を崩す学生や、国家試験に合格しながらも数か月で離職してしまう卒業生を見送るたび、大きな無力感を抱いていました。臨床の現場ではエビデンスが日々更新されている一方、学生指導は教員個々の経験則に依存する場面が多く、科学的・心理学的根拠に基づいた歯科衛生士養成教育の必要性を痛感しながらも、業務の多忙さを理由に具体的な行動を起こせずにいました。

転機は2022年6月、BTSが兵役履行を発表したときです。この決断を「Chapter 2」と表現する姿に触発され、「私も次のステージに挑戦しよう」と決心しました。そこで長年先送りにしていた大学院進学を真剣に検討し、「社会人大学院 東京」と検索したところ、最初に表示されたのが筑波大学東京キャンパスのホームページでした。カウンセリング学位プログラムの特徴として、「カウンセリングを治療的カウンセリングに限定せず、研究能力および高度の専門性を備えた専門的職業人を育成する」という理念が書かれており、私の問題意識にまさに合致していました。

受験を決意し、夏の入学試験へ向けて急いで出願書類を整え、心理学の参考書を片手に試験勉強に取り組む日々が始まりました。心理学は初学者で不安もありましたが、BTSの曲をBGMに夜な夜な受験勉強に取り組みました。筆記試験の手応えは薄かったものの、幸運にも合格通知をいただき、私のChapter 2が幕を開けました。

大学院生活

入学後は、心理学を初めて体系的に学ぶ難しさに直面しました。1年次春の授業では、用語の意味がわからず、理解が追いつかないことも少なくありませんでした。しかし、先生方や同期の仲間が基礎から丁寧に教えてくださったおかげで、次第に知識がつながり始めました。授業内のグループディスカッションでは、自己開示を求められる場面が多くあり、医療分野一筋だった私にとって、一般企業で活躍する同期の経験や価値観に触れることは新鮮な刺激となりました。

1年次夏の「社会調査法」では、グループごとに設定したテーマを用いて量的研究を実践的に学びました。私たちのグループでは、この研究成果を2年次夏に学会発表することができました。それぞれの研究に追われる多忙な時期でありながら、「面白そうだから挑戦しよう」と即座に声を上げてくれる仲間との出会いは、大学院生活の何よりの財産です。平日は終業後に授業に出席することができ、土曜日は教育の森公園を抜ける朝の清々しい風と木々の香りに包まれながら授業に臨むことができる東京キャンパスの環境も、学びを豊かにしてくれました。

1年次冬からは指導教員の下で修士論文の計画を練り上げ、現場への還元方法を探究しました。定期的な発表会やその後の飲み会では、教授陣から鋭い指摘と励ましをいただき、そのたびに研究内容が研ぎ澄まされていく手応えを実感しました。通勤中にiPhoneで抄録を書いたり、ダイニングテーブルにモニターを設置して子供の食事を見守りながらデータの分析をしたこともありました。

行き詰まるたびに指導教員やゼミ仲間と(お酒を飲みながら)夜遅くまで議論を重ね、迷いと達成感を交互に味わいました。「自分は何も分かっていない」と絶望したことも、「ここまでできた」と自信を得た瞬間も、すべてが成長の糧となりました。こうした恵まれた環境の下、入学当初は不安でいっぱいだった私も最後まで自律的に研究を進め、修士論文を完成させることができました。

修了後

修了してからまだひと月ほどですが、私は確かにChapter 2へ進んだと感じています。4月から新しい職場で歯科衛生士養成教育に携わりながら、修士論文を学術誌に投稿すべく改稿作業に励んでいます。在学中に学んだ計画された偶発性理論は、私のキャリアが偶然の出会いと意図的な努力によって形成されてきたことに気づかせてくれました。これからは歯科衛生士のキャリア形成をテーマに研究の幅を広げ、教育現場と研究活動の両輪で歩みを進めるつもりです。

カウンセリング学位プログラムは、予想を超える出会いと学びを私にもたらしてくれました。本稿をお読みの皆様も、すでに扉の前に立っておられるはずです。ぜひ勇気を出してご自身のChapter 2 を切り開かれることを心よりお勧めいたします。