被災地自治体職員の皆様へ(2016.4.15)
筑波大学人間総合科学研究科 松井 豊
日本ファーストエイドソサェティ 岡野谷 純
このたびの震災につき、まずはお見舞いを申し上げます。また大変な惨状の中で県民・市民の皆様のためにご活躍されていらっしゃいますこと、本当にありがとうございます。
ここで活動中や活動後に心身に現れる「心理反応」について少しご説明させていただきます。周囲の方々のご様子にも目をむけつつ、皆様で安全に業務を遂行してください。
悲惨な現場で活動された職員の方は、以下のような心身の変化を経験されることがあります。
a)興奮状態が続く:
寝付けない、気持ちが落ち着かないといった症状もよく見られます。特に「もっとこうすれば良かったのではないか」などの自分を責める気持ち、「今自分が職場にいないと仕事が滞ってしまう」という焦燥感などが起こりやすくなります。
b)体験を思い出す:
折りに触れ現場のことを思い出し、フラッシュバック(突然、非常に鮮明に体験を思い出したり、夢に見たりする状態)が起こることがあります。
c)思い出すことを避けようとする:
現場で起こったことについて、人に聞かれることも、思い出すこともわずらわしくなることがあります。現場に関する報道も見たくなくなります。
d)周囲との摩擦:
周囲の人に対して、普段なら感じないような不満や怒りが急に出てきたり、人間に対する信頼感が急にわいてきたり、逆に極度の人間不信に陥る人もいます。
e)話せなくなる:
現場のことを周囲に話しても分かってもらえないと思って、胸にしまい込んでしまう人もいます。
これらはいずれも「惨事ストレス」という心理反応の一部です。厳しく異常な現場で活動した方には誰にでも普通に起こる状態です。しかし、こうした反応が長引いたり、苦しさがとれない場合には、専門家に相談してください。
惨事ストレスを軽減するために、効果があるのは以下のようなことです。
1.まずは休養と休息をとってください。
災害対応は延々と続き、興奮状態になりやすいので、休めない状態になりがちです。しかし、災害対応は長期戦になります。長期戦に耐えるためには、まず休息が必要です。
2.親しい方とともにすごして下さい。
家族がいらっしゃる方はご家族と、恋人や友人がいらっしゃる方は恋人やご友人と一緒に過ごす時間をとってください。ご家族やご友人は皆さんのことを気遣い、心配しています。その方たちと一緒に過ごし、少しでも愚痴をこぼせれば、気が休まります。また、不安を感じているご家族やご友人にとっても、癒しの場になります。
3.少し活動が落ち着いたら、一緒に活動してきた同僚や仲間と話し合う機会を作って下さい。
折に触れ、一緒に活動した仲間と率直に気持ちを話し合い、励ましたり、支え合ったりすることが大切です。
4.今回の災害では関連報道が長く続くと予想されます。
当初は何のストレスも感じていなかった方でも、報道に接するにつれて、ストレス反応を示すことがあります。1~2ヶ月ぐらいたったら、下記リンク先のストレスチェックリスト(IES-R)を実施してみてください。このリストで得点が高い場合には、上司や同僚に説明して、各種専門機関への紹介を依頼して下さい。
ストレスチェックのためのリスト(IES-R)はこちら
災害対応は長期戦になります。県民・市民の生活を支えるために、まず職員の皆様がご自身の心身をいたわってくださるように願っております。
お問合せ:NPO法人日本ファーストエイドソサェティ 03-5974-3747