消防本部の皆様へ

熊本地震に職員を派遣された各本部様への御願い(2016.4.21.)

筑波大学人間総合科学研究科 松井 豊
 
このたびは、貴本部から有能な職員の方を派遣して頂き、心より感謝申し上げます。今回の地震では活動中の苦労が多かったため、派遣された職員の方は、帰署後にストレス反応を示すことがあります。帰署後のストレス緩和のために、各本部の皆様に心がけていただきたい点を説明します。

1. まず休養をとらせてください。

派遣された職員の方が帰署されると、各種報告や行事も用意されているかと思います。職員自身も興奮状態になっていることが多く、自身の疲れを自覚できにくくなっています。しかし、これはストレス反応の一部であることがわかっています。
まずは、休養を確保してください。

2. マスコミ対応は、組織としての対応を。

マスコミに個別に対応していると、職員の方に疲労が蓄積したり、フラッシュバックなどの症状が出たりすることがあります。職員が個別にマスメディアに出ることは避け、原則、組織としての対応を図り、マスコミが望む場合には、職員本人の意向を確認した上で、記者会見の形式をとることをおすすめします。

3. 活動記録をまとめる時間を。

派遣された職員が複数いらっしゃる場合には、派遣された職員同士で、活動記録をまとめる日をお作りください。活動を振り返り、そのときの気持ちなども話せれば、ストレス緩和効果が期待できます。派遣された職員がお一人の場合、前に派遣された経験のある職員がいれば、一緒に話をしていただいてもよいでしょう。
この間に臨床心理の専門家やカウンセラーに、個別面談をしていただけるとより効果的です。

4. 周囲の職員の接し方は、「いつもどおりに」。

周囲の職員の方は、ともすると派遣された職員を英雄視したり、逆にやっかみや嫉妬を示すことがあります。代理勤務のための苦情も出やすいので、注意して下さい。
派遣された職員の中には、周囲に話しても理解してもらえないだろうと考えて、話すことを控えたり、孤立感を感じてしまう方もいます。周囲の職員の方は自然に接し、派遣された職員が孤立しないようにお気をつけ下さい。
また、周囲から個別に当時の様子を質問されるのも、派遣された職員の方には負担になりますので、派遣された職員の意向を確認の上、他の職員に向けた報告会を開く方策もあります。

5. 1ヶ月後にストレスチェックを。

今回の地震に関する報道は長く続くことが予想されます。帰署当初は平常でも、繰り返す報道に接するうちに、ストレス反応や症状が出てくるケースもありました。派遣された職員の方には、下記のストレスチェックリスト(IES-R)をご紹介ください。1~3ヶ月後ぐらいに回答して頂き、合計得点をお尋ねください。25点以上ですと、ストレス反応が残っていると判断されます。

※ストレスチェックのためのリストはこちら

6. 長期的には、普通に職場に戻れることが第一。

時間がたてば、周囲の反応も落ち着いてきますので、普通に職場に戻してください。
また、派遣された仲間との交流を持つように促して下さい。さらに、本人の活動の意味づけのために、本人が希望すれば、惨事ストレスの研修等に行っていただくことも有効でしょう。

7. 派遣された職員のご家族には、厳しい現場に出られた事を説明して。

無理のない休養とストレス解消をおすすめ下さい。派遣された職員の方は、帰署当初にはストレス反応が見られることがありますが、時間がたつと徐々に消えていきます。もし、時間がたつにつれてストレス反応が重くなっていると感じたら、カウンセラーや産業医の先生にご相談されるようにおすすめ下さい。

8. 総務省消防庁消防救急課に相談を。

総務省消防庁消防救急課では、緊急時メンタルサポートチーム制度をとっています。職員の方の様子を見てストレス対策が必要かもしれないと感じたら、ご連絡いただければ、専門家を派遣いたします。

※緊急時メンタルサポートチームの派遣を御希望される本部は下記までご連絡ください。
ご連絡先:℡03-5253-7522(総務省消防庁 消防・救急課 職員第一係)

派遣された職員の皆様がストレスを和らげ、派遣経験を消防人としての成長の契機とされる事を祈っております。

>>前ページに戻る