筑波大学 人間系 障害科学域柿澤敏文研究室

社会的インクルージョン/教育的支援

社会的インクルージョン

 2006年12月13日の第61回国際連合総会本会議において、国際人権法で定める人権の視点を考慮した障害者権利条約が採択され、2008年5月に発効しました。障害者権利条約第1条目的では、「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。」と規定します。日本では、この障害者権利条約の批准のために、障害者基本法の改正(2011年8月)、障害者総合支援法の成立(2012年6月)、障害者差別解消法の成立および障害者雇用促進法の改正(2013年6月)など、様々な法制度整備が行われました。教育制度においては、2007年4月に行われた特殊教育から特別支援教育への移行の後、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築が進められています。これらはいずれも、これまでの施策に社会モデルの考えを加え、さらに人権の視点も加えて障害を位置付けた対応と捉えることができます。
 2014年1月20日、日本は障害者権利条約の批准書を国連に寄託し、日本は141番目の締約国・機関となりました。2016年4月には、障害者差別解消法が施行され、実際に効力が発揮されています。障害者が社会の中で、自らの持つ可能性を十分に発揮し、共に生きていくことのできる体制の整備が、今後ますます進められます。

教育的支援

 視覚からの情報の制限のある視覚障害児には、社会性の発達の遅れや偏りが生じやすいことが知られています。この社会性の発達を促す各種の指導法が盲学校を中心として開発されています。
 近年、障害のある幼児・児童の教育的支援は、特別支援学校(盲学校などの特殊学校)などにおける分離教育システムから、通常の学校に在籍し、個別の支援を受けるインクルーシブ教育システムへ、全世界的に移行しつつあります。その結果、これまで盲学校において開発・適用されてきた各種の指導法が、インクルーシブ教育システムのもとでは必ずしも適用できず、また、その効果は未知数となっています。
 そこで、インクルーシブ教育システムにおける、通常の学校に在籍する視覚障害幼児児童の社会的行動の実態把握とともに、インクルーシブ教育システムにおける支援を念頭に開発された個別支援プログラムによる、視覚障害幼児の社会的行動の形成効果の検証が必要とされています。

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