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2020.06.21 お知らせ

コロナ禍の先へ向かうために―「インターネット心理学」が提案する,7日間VR体験&心のエクササイズ

このたびの,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害に遭われた皆様に,心よりお見舞い申し上げます。

昨今,世界各国において様々な対策が取られているこの問題については,身体・健康上の危険性のみならず,「こころ」の面でも多くの悪影響を引き起こすことが指摘されており,たくさんの「こころのケア」に関する対応が展開されています。また現在,39県で緊急事態宣言が解除されましたが(5月14日時点),その一方で継続的な感染防止策の徹底が求められています。ならびに,これまでの長期にわたる外出自粛からの「ストレス」「反動」の危険性について懸念する声も多くみられます。加えて,依然として緊急事態宣言が解除されない都道府県においては,今後も引き続きの対応が求められますが,このことは,災害心理学において指摘されている「社会的比較によるストレス(災害の発生からしばらくの期間が経過し,復興に向けて動き出す時期において,同じ被害者の中でも,被害の有無や被害の程度に差があることが目の当たりにされ,新たなストレスが発生すること)」を引き起こしかねません(より詳細な説明については,「惨事ストレスとは何か―救援者の心を守るために―(2019年,松井豊 著)」などもご覧ください)。

このように,「事態の収束に向けて」という段階にある今こそ,注意深く心のストレスを見つめ,ケアしていく必要があります。本ページでは,これまであまり注目されてこなかった,「場所」という感覚の喪失という問題に焦点を当てて今の私たちが置かれている心の状態について説明しつつ,最近では身近に利用できるようになったヴァーチャル・リアリティ(VR)の力を用いて,私たちのこころをセルフケアしていくための新しい方法について提案している論文をご紹介したいと思います。

この論文は,イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学の心理学者であるリヴァ・ジュゼッペ教授(Prof. Riva Giuseppe)が”Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking”という学術誌に投稿し,2020年5月に掲載された論文です。このたび,ご本人からの許諾を得たうえで,部分訳ではありますが日本語に翻訳し,紹介させていただいております。ここに記して心より御礼申し上げますとともに,ここで紹介している内容が,この日々を過ごす皆様の心の重荷やストレスを少しでも軽くすることにつながればと願っております。

==(以下,翻訳:見出し,追記事項は訳者によるもの)==

原題:インターネット心理学およびヴァーチャル・リアリティは,コロナウイルスによってもたらされる心の苦しみを乗り越えるためにどのように役立つか?
How Cyberpsychology and Virtual Reality Can Help Us to Overcome the Psychological Burden of Coronavirus?
Giuseppe Riva and Brenda K. Wiederhold
Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking Vol. 23, No. 5, 277-279.
http://doi.org/10.1089/cyber.2020.29183.gri

まず,気づかないうちに起きている,私たちの中の『心のジレンマ』を知ろう

コロナウイルスのことを心配しながら過ごす日々は,身体の健康の危機をもたらすだけでなく,私たちの「自分が自分であること(アイデンティティ)」や「周りの人々との人間関係」にも緊張を与える,甚大な心のストレスをもたらしていることでしょう。

昨今のコロナ禍によって私たちは,3つの『心のジレンマ』に同時に悩まされています。

第1のジレンマ―「不安」と「無力感」
第1のジレンマは,もはや言うまでもないものでしょう。コロナウイルスは,私たち自身や大切な人々を危険にさらすものとして,大きな「不安」をもたらしています。そしてこの不安は, SNSを通して私たちに絶え間なく届く「情報」によって高められています(しかもその情報は,お互いに矛盾するような内容であることも多々あります)。

こうした状況の中では,私たちの脳は『闘うか・逃げるか・凍りつくか』という3つの選択をとっさに判断して,すぐに反応しようとするモードに切り替わります。このモードは,通常であれば,自分たちを脅かす危険な状況や事態を乗り越えるために役立つものです。しかし,今回のコロナ禍に関して言えば,この状況は短期的なものではありませんし,「闘う」という方法で乗り切れるようなものでもありません。

そのため,結果として,2つの悪影響が生じます。一つは,(この事態から逃げたいと思うことによる)「いらだち」や「不眠」,そしていつまでも続く「不安」「落ち着かなさ」です。もう一つは,闘うことも逃げることもできない場合に残される第三の選択としての,「凍り付く」という反応です。いつになるかわからないこの事態の収束を待ち続け,普段どおりの生活が送れなくなったり,何もする気がなくなったり…というように,ただ立ち尽くすだけの状態です。

訳者より追記1:
昨今の日本国内の現状を踏まえると,上記のような「感染するかもしれない不安」だけでなく,罹患したかどうかがすぐわからないことによる「感染させるかもしれない不安」や,事態収束の期限が見えないことによる「経済的な不安」にも注意する必要があるでしょう。その詳細については,こちらのページでも解説しています。

第2のジレンマ―「場所」を失うこと
第2のジレンマは,それほど明白なものではありませんが……昨今の「隔離・外出自粛」は,気づかれにくいのですが,私たちに非常に大きな影響をもたらします。それは私たちの日常から,「場所」が消えてしまう,ということです。

心理学において,「場所」とは“境界線によって区切られた,閉じた空間”とされますが,『場所への愛着』というものもあるとされています。これは,自分にとって意味のある場所に対して気づいたり感じたりする,深い「絆」のようなつながりであり,たくさんの文化で共通してみられる現象です。

この感覚は,私たちの心に,たくさんのポジティブな影響をもたらしてくれます。2014年にノーベル医学賞を授賞した研究によれば,私たちの脳の中には,「場所細胞(place cell)」と「境界細胞(border cells)」というものがあります。これらは,私たちが空間の中の特定の場所にいるときや,その空間の中の境界線を認識したときにはたらく細胞です。これらの細胞のお陰で,私たちは,よく行く様々な場所で起きた出来事や,そこにいた人々の記憶を通じて,「自分自身がどのような人物であり,どのような経験をしてきたか」ということに関する記憶(心理学では,このような記憶のことを「自伝的記憶」と呼びます)を確立することができます。

例えば,私たちが「自分は学生である」と思えるのは私たちが学校に行っているからであり,「自分は働いている」と思えるのは会社に行っているからであり,私たちが「○○のファンである」と思えるのはスタジアムに行っているからであり…というように,『自分は何者である』と感じられるかは,「場所」によって大きく左右されるものなのです。

昨今の隔離・外出自粛は,この「場所」の感覚を失わせてしまいます。隔離によって私たちは,日常の暮らしを支え,自分が自分であることを感じさせてくれる場所に行けなくなっています。その一方で,私たちがいま,毎日の大半を過ごしている我が家は,「境界線」がなくなってしまったことにより,もはや場所としての意味を感じられなくなっています。昨今の私たちにとって,家の中で,集中して働いたりゆっくりくつろいだりする「自分の場所」を確保することはとても難しくなっています(小さなお子さんがいるご家庭では特にそうでしょう)。しかし私たちは,自分の「場所」がなくては,「自分が自分であること」の感覚も,先ほど紹介した自伝的記憶も持てなくなってしまいます。毎日がまったく同じように感じられ,毎日の終わりには退屈さや刺激のなさばかりが感じられてしまいます。

第3のジレンマ―「所属している」感覚の喪失
第3のジレンマは,第2のジレンマによって引き起こされる影響です。心理学の研究では,「どこかに所属している」「ここが自分の居場所だと感じられる」「何かの一員である」という感覚(これらは,「コミュニティ感覚」とも呼ばれます)は,他の場所とは区切られた,特定の場所があってこそ成立するものだということが示されてきました。

「場所」という場所が存在しなくなっている今,「自分がどこかに所属している」という感覚も感じられなくなっています。また,オフィスにも職場にも学校にも行きつけの飲み屋にも行けないことで,その場所でこそ出会える人々に会うことがとても難しくなっており,人々とのつながりも感じられなくなっています。

その一方で,境界線がなくなってしまった我が家の中で,それでもなお頻繁に顔を合わさざるを得ない家族は,もはや「家族みんなで一緒に…」というような感覚よりも,むしろ「一人一人でそれぞれに…」という感覚を持つようになっているかもしれません。結果的に,お互いのことを共有しあったり,お互いを受け入れたりすることができなくなった今,様々なトラブルが増えてきています。

『心のジレンマ』を乗り越えるためには?……今こそ,VRの力を

これまでに見てきた,3つの『心のジレンマ状態』に同時に対処することは簡単なことではありません。しかし,「ヴァーチャル・リアリティ(VR)」という革新的な技術が,その役に立つのではないでしょうか。

長い間,VRの普及は,そのコストが大きなハードルとなっていました。しかし今では,最もシンプルで安価なVR機器は,拡大レンズと,段ボール紙かプラスチックの箱の組み合わせでできてしまいます。簡単なヘッドセットであれば,非常に安く売られており,通常のスマートフォンと組み合わせることですぐに3次元空間を作り出すことができます。こうしたモバイル機器を利用したVRは,特定のVRコンテンツに合わせて作られており,昨今のコロナ禍によるストレスを乗り越えるために非常に役立つものとなるはずです。

VRで体験できる360°映像には,見ている人を「どこにでもバーチャルに連れていける」パワーがあります。録画された世界の中に没入し,コンテンツの中をどんどん探検したり,あらゆるアングルから映像を楽しむことができます。最近の研究によって,このような映像には,独特の感情状態を引き起こす力があることも示されています。また,その他の研究からも,VR上の360°映像に対する神経表現は,現実のパノラマ環境のように統合された神経表現をもたらし,その後の知覚判断にも影響することが示されています。つまり,360°の映像によって私たちの記憶と知覚が相互に影響し合い,私たちの認知の流れを変え,そして私たちが認知する世界はより素晴らしいものへと変わりうるのです。

この記事をご覧になっている方に,VR技術によって心身の健康を回復・増進していただくために,この論文の著者一同からみなさまに,無料で利用できる「秘密の庭―”The Secret Garden”」というVR動画をご紹介します(こちらのページの中にコンテンツとしてアップされています(英語)→https://www.covidfeelgood.com/)。これは,10分間の,3Dの360°映像(4K対応)で,コロナウイルスによってもたらされたストレスを乗り越え,先ほど紹介したように「場所」や「どこかに所属している」という感覚が失われないようにすることを意図して作られたものです。

また最近では,イタリアのコロナウイルス感染の中心地であるロンバルディア州において,心理学者たちの手によって作られたものもあります(こちらのページの中にコンテンツとしてアップされています(英語)https://become-hub.com/en/)。これは,広大な地域に住む多くの人々に心の安らぎを提供することはとても難しいことを忘れないように…ということを意図して作られたものです。スマートフォン,タブレット,PCでも利用できますが,ヴァーチャルな世界で得られる心の効果を完全に体験するならば,ちょっとしたものでもよいのでヘッドセットがあった方がよいでしょう(それほど高いものでなくて結構です)。以下のように利用するのがおすすめです。

◆1週間ほど,一日に2回以上利用してみてください。また,あなたの不安の程度や状態に合わせて利用しましょう。朝目覚めてからすぐに一度,そして,夜眠りにつく前にもう一度,気持ちを落ち着かせるためのツールとして利用してみるのもよいかもしれません。もし一日のうちに辛い時があれば,ストレスの低減・回復のための「安全な場所」として,そのタイミングで使用することも良いでしょう。

◆できれば,誰かと一緒に利用してみてください。あなたのパートナーやお子様,または友人たちと一緒に。同じ場所にいる人でなくとも構いません。誰かと一緒にVR体験をしたり,体験を通して生じてきた感情や気づいたものを共有したりすることは,先に紹介した「どこかに所属している」という感覚を再構築させてくれるはずです。

◆VR体験を通して,あなたの「自分が自分であること」を振り返り,そして「未来の目標」についても再確認してみてください。今回のコロナ禍は,目の前で起きている問題であると同時に,またとない「機会」であるともいえます。望むと望まざるとにかかわらず,例えば隔離や外出自粛,子どもたちや家族と密に過ごす時間,人間関係の欠如など,私たちは,たくさんの変化や新しい状況への対応を迫られました。しかしVRでの体験は,私たちの心を整理し,将来の目標や,それを妨げるものを再確認し,これからのアクションを取るための心の余裕とエネルギーを与えてくれるはずです。

訳者より追記2:
日本では,全国を旅することのできる,以下のような360°映像もあります(ここでご紹介しているのはごく一例です。このほか,あなたの住んでいる町の様子を撮影したVR動画をいろいろ探してみるのも楽しいかもしれません)。また,VR動画に対応する機器をお持ちでなくとも,動画として視聴でき,その場所に行ったような感覚を味わえるかと思います。
360°タウンワープ全国
北海道VRツアー
360°VRVideo TOHOKU×TOKYO
360°VRVideo HOKURIKU×TOKYO
360°VRVideo CHUGOKU+SHIKOKU×TOKYO
360°VRVideo KYUSHU×TOKYO
しこく VR
ストリートミュージアム

訳者より追記3:
・また上記以外にも,Google mapのストリートビュー機能を用いて,自分がよく行っていた場所や,自分や周りの人との思い出の場所,いつか行きたいと思っていた場所に,「行ってみた」体験をしてみるのもよいのではないでしょうか。特に,こちらのサイト(https://streetviewexplore.com/)は,場所名や住所を入力するだけでその場にすぐ「行く」ことができます。
・さらに,例えば「昔,よく遊んだ友達と,初めて出会ったあの公園までの道をたどってみる」「最近あまり会えていないあの人と,最後に会った場所まで移動してみる」「そのうち○○さんと行こうと思っていたカフェへ,駅を降りてからの道のりを体験する」など,その場所だけではなく,その場所への途中の道のりを体験したり,その場所とゆかりのある人のことを思い出したりすることもまた,ポジティブな効果をもたらすと思われます。
・加えて,家族と一緒に住んでいる方は,「パパやママがどんなところで仕事をしているのか」「うちの子の,この町のお気に入りスポットはどんなところなのか」を,お互いに体験しあってみるのもいかがでしょうか。
・その他,360°写真が撮影できるカメラやアプリをお持ちの方は,これまでに撮った場所・観光地・風景などの写真などをSNSにアップし,みんなで共有しつつ,「一緒にその場所まで出かけた」感じを味わうのもおすすめです。最近流行の「オンライン飲み会(お酒が苦手な方は,オンライン食事会やオンラインカフェで)」の際に,こうした360°画像を共有してみるのも楽しそうですね。
・小型カメラにて撮影された「一人称視点」の動画もまた,「自分がその人になりきったような感じ」を味わうのに役立ち,ここではない別の場所へと行ったような感覚をもたらしてくれることでしょう。

これからの1週間,次の「心のエクササイズ」とともに,VR体験をしてみては?

毎日のVR体験の後には,以下のような手順も一緒に試してみてはいかがでしょうか。あなたの心を落ち着け,3つの『心のジレンマ』から抜け出すためにおすすめです。

1日目:繰り返される不安や思考を「コントロール」する

コロナウイルスのことやこれから起こることが気になったり,そのことについて深く悩んだりすることは,ごく自然なことです。ですが,そうした不安や悩みが心にいつまでもこびりついてしまわないように(心理学では,このことを「固着」と呼びます),気持ちをコントロールする方法を学ぶことも重要です。

そのためには,「物事に対する見方を変える」ことから始めてみましょう。例えば,あなたが,あなた自身ではなく,他の人物であると想像してみてください。患者を治療しなくてはならない医師や,何をすべきかを判断しなくてはならない政治家,目の前の患者の残りわずかな人生の一瞬を支えなくてはならない看護師になったと想像してみましょう。

その時わきあがってきた気持ちや,「自分だったらどうするだろう」ということについて,言葉にしてみてください。そして,これらの状況の中で生じた,怒り・絶望などのつらい気持ちを,あなただったらどのように吐き出すか,についても言葉にしてみましょう。可能であれば,あなたの気持ちについて誰かと話してみたり,お互いの考えを比べてみたりして,類似点や相違点について理解を深めるのもよいかもしれません。

訳者より追記4:
自分が感じている苦しい気持ちや感情について,無理に押し込めたり強引に忘れようとしたりするよりも,あえて言葉にしてしっかりと向き合うことで,(その時にはより苦しく感じられるものの)長期的には心の苦しさの低減につながることも,これまでの心理学の研究の中でいくつか示されています。決して,無理に言葉にしすぎる必要はありませんが,少なくとも,今の気持ちを否定するばかりではなく,そのまま受け入れることも大切ですし,大きな意味があります。

2日目:「自分自身への自信」を取り戻す

外出自粛や隔離によって,私たちはつねに同じことを同じ相手と同じ場所で行わなくてはならなくなりましたが,そのために無気力になったり,自分自身に対する自信(心理学では,自尊感情とも呼ばれます)が失われたりしてしまうものです。

この自信を取り戻すために,例えば,あなたが自分で評価することのできる,あなた自身の特徴・性格について5つリストアップし,それを重要な順に並べてみてください。そして,それらについて,次の2つの観点からそれぞれ考えてみてください。1つ目は「あなたは,なぜ,それを重要だと思ったのか」,2つ目は「その特徴・性格は,あなたの人生や人間関係に,どのような影響をもたらしているのか」。可能であれば,そのことについて誰かと話しあってみたり,同じ見方をしているかどうかを確認してみたりするのもよいでしょう。

3日目:「自伝的記憶」を取り戻す

先に述べたように,「場所」を失うことは,あなたの自伝的記憶を失わせてしまい,毎日が同じような日々のように感じられ,「自分がどのような人物で何を望んでいたのか」についての記憶を失うことにもつながります。

自分を支える記憶を取り戻すために,あなたの人生の中で経験した,「あなたが,“あなた”らしくいられた瞬間や出来事」について,4つリストアップしてみてください。またそれぞれについて,次の観点から考えてみてください。1つ目は「なぜ,その瞬間・出来事があなたにとって大事なのか」,2つ目は「その時,どのような気持ちが生じたか」,3つ目は「いつ,その瞬間・出来事の時と同じような気持ちを抱いたか」。可能であれば,そのことについて誰かと話しあってみたり,お互いの考えを比べてみたりして,類似点や相違点について理解を深めるのもよいかもしれません。

4日目:「どこかに所属している」という感覚を取り戻す

先に述べたように,「どこかに所属している」という感覚が失われることは,孤独感を強めてしまいます。

この感覚を取り戻すために,あなたの人間関係の中で,最も大切な人を最大5人までリストアップしてみましょう。そして,それぞれの人について,次の観点から考えてみてください。1つ目は「なぜその人は,あなたにとって重要なのか」,2つ目は「あなたもまた,その人から重要だと思われているか,その理由は?」。可能であれば,そのことについて誰かと話しあってみたり,お互いの考えを比べてみたりして,類似点や相違点について理解を深めるのもよいかもしれません。

5日目:これからの「目標」や「夢」を取り戻す

コロナ禍によって生じる不安が続くことで,日常の様々な活動が妨げられるばかりでなく,自分が志していたことや目標も見失いがちになってしまいます。

目標や夢を取り戻すために,”このコロナ禍が収束し,外出自粛がなくなった後”に達成したい具体的な目標を3つと,かなえたい夢を2つリストアップしてみてください。そして,それぞれについて,次の観点から考えてみてください。1つ目に「なぜその目標・夢は,あなたにとって重要なのか」,2つ目に「その目標・夢を達成するために必要なものは何か」,3つ目に「いま,あなたにできることは何か」。可能であれば,そのことについて誰かと話しあってみたり,お互いの考えを比べてみたりして,類似点や相違点について理解を深めるのもよいかもしれません。

6日目:他人への「共感」を持つ

どのような人間関係であっても,そこにはいつでも,「与える」ことと「受け取る」ことの両方が含まれているものです。しかし,誰かに何かをちゃんと「与える」ためには,相手の視点や立場を「受け取る」必要があります。

そのために,4日目にリストアップした5人との間で最近交わした,大切と思えるやりとりについて振り返り,その時に5人それぞれがどのような気持ちを抱いていたと思うか,言葉にしてみましょう。繰り返しになりますが,可能であれば,あなたの気持ちについて誰かと話しあってみたり,お互いの考えを比べてみたりして,類似点や相違点について理解を深めるのもよいかもしれません。

7日目:あなたが,これからどう「変化」していくかを計画する

ここでは,あなたの人生をより良いものにしていくことを目指しましょう。まずは,あなたの人生の中で,まだ満足できていない点を3つ,言葉にしてみるところから始めてみてください。

そして,ここからは3枚のシートを用意してください。1枚目のシートに,それらの点への解決案を書き出し,「実現する可能性の高い順」「実現のためのコストが大きい順」に並べてみましょう。続いて2枚目のシートに,起こりうる問題や,その問題によって生じる影響について,書き出していきましょう。さらに3枚目のシートに,解決のために必要ではあるものの,あなたがまだ持っていない手段や情報は何か,ということについても書き出してみてください。最後に,問題について書いた第二のシートを片付け,第一と第三のシートを基にして,あなたのまわりの人々からいろんな力をもらいながら,あなた自身を,問題の解決に向けて動かしていくための「作戦」を計画していきましょう。

==(翻訳ここまで)==

翻訳:藤 桂(筑波大学人間系心理学域)
翻訳協力:福林 直(筑波大学生涯発達専攻カウンセリングコース修了生)
制作協力:片山まゆみ,平野智子,六瀬貴大(筑波大学生涯発達専攻カウンセリングコース修了生)