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日本ではキャリア教育の歴史が浅く、取り組むべき課題が山積しています。同時に、現行学習指導要領はその総則において小学校からの継続的・体系的なキャリア教育の実施を明示的に求めていますし、すでに「キャリア・パスポート」の運用も始まっています。さらに昨年(2022年)4月には成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、実質上、大多数の高校3年生が在籍中に親権に服さなくなる時代を迎えました。18歳になると選挙権を得ることとなりますし、各種の契約や、進学・就職などの進路決定などにあたって親の同意は必要なくなります。キャリア教育にとって成年年齢引下げが極めて重要な意味を持つことは指摘するまでもないでしょう。また、2021年の育児・介護休業法改正に基づく男性の育児休業取得促進のための仕組み作りも仕上げの時期を迎え、今月(2023年4月)からは、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられました。「子育ては女性の仕事」等を典型とした固定的な性別役割分業からの脱却は、キャリア教育にとっても喫緊の課題の一つです。キャリア教育の更なる充実は「待ったなし」の状態に移行したと言えるでしょう。
加えて、これまでほぼ3年にわたって続けられてきた新型コロナウイルスの感染拡大抑止のための試行錯誤にも、やっと光が差してきました。もちろん、当該ウイルスを完全に克服した「ポスト・コロナ」の時代がやってくるわけではなく、共存の道を模索し続ける「ウィズ・コロナ」の時代の扉が開いたに過ぎません。その上、ウクライナ侵攻などに伴う不安定な世界情勢や、対話型AI技術の顕著な進展など、未だ経験したことのない変化に直面しつつ私たちは生きて行かざるを得ません。このような時代だからこそ、子どもたち・若者たち一人一人の社会的・職業的自立に向けた力を育成するキャリア教育の拡充がこれまで以上に必要となるのではないでしょうか。
無論、学校教育を支える先生方の勤務時間が他の国々と比べて突出して長いことなどを踏まえ、学校での負担過剰を避ける方途を模索することもキャリア教育の推進上不可欠となっています。
このような中にあって、学校で日々奮闘なさっている先生方や、教育行政の現場で「縁の下の力持ち」の重責を果たしていらっしゃる皆様が、家庭や地域社会の方々と必要な連携を図りつつ、笑顔でキャリア教育に取り組んでいただけるようになること。そして、一人一人の子どもや若者が、不透明で混沌とした社会にたじろぐことなく参画し、より良い未来を構築するための力を身につけることができるようになること。これが私たちキャリア教育学研究室の願いです。
この願いの実現に少しでも近づけるよう、私たちは、国内外の関連理論・制度・実践を幅広く分析対象としながら研究活動をすすめています。今年度は、博士前期・後期課程の院生10名がそれぞれ設定した研究テーマに基づいて頑張っているところです。毎週、月曜日の夕方に開催している研究会には、この他にも、人間総合科学学術院教育学学位プログラムの院生や人間学群の学生などを含め20名ほどが参加しています。
筑波大学の教育学関連分野において、独立した専門研究領域としてキャリア教育学が認められたのは2015年度のことです。人間の発達になぞらえれば今年で満8歳。小学校3年生です! 友達同士での遊びが一気に増え、自立心が芽生えてくる時期ですね。また、筋道を立てて考える場面が一段と増えてくるのもこの頃の特徴の一つです。親の視点から捉えれば、著しい成長が嬉しくもあり寂しくもある時期かもしれません。私たちキャリア教育学研究室も、そのような3年生たちに負けない成長が遂げられるよう研鑽を重ねて参りたいと存じます。関心のある方は是非お問い合わせ下さい。お待ちしています!
(2023年4月2日)