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〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1 筑波大学人間系

キャリア教育 よもやま話Just Mumbling...

第71話 AIは私たちの「考える力」をどう変えるのか(2026年4月9日)

  •  新年度がスタートしましたね。改めまして、今年度もどうぞよろしくお願いいたします。つくば市近辺では、3月末に満開を迎えたソメイヨシノが、一昨日くらいまで持ちこたえました。本学を含め、市内の各学校の入学式が、枝を覆い尽くす桜の花々に祝福されつつ挙行できて良かったなぁと思いました。皆さまのお近くの桜はどんな状況でしょうか?

     先日、ユネスコ(UNESCO)の機関誌Courierの最新号(2026年4月-6月号)が発行されました。
    https://courier.unesco.org/en/latest

     特集テーマは「Artificial intelligence: do we still need to think? (AI時代において、人間はなお考える必要があるのか)」です。急速に進展する生成AIが、私たちの学びや思考、そして人間らしさそのものにどのような影響を及ぼしているのかを、多角的に問い直す意欲的な企画となっています。今回のよもやま話では、この概要をご紹介します。

     ここ数年で生成AIは、学習や知識の伝達に関する従来の常識を塗り替えてきました。AIを活用することによって、整った文章を作成することのみならず、豊富な文献等の引用を含むレポートさえも容易に書き上げることができるため、学校教育の現場では、あたかも「高度なカンニングツール」のように使われるケースが散見され、学習者自身の実際の理解やスキルとの乖離が問題となっています。一方で、世界中の先生方はこのAI技術の可能性とリスクの双方に関する認識を深めつつあり、膨大な情報への単なるアクセスだけでなく、その創造をも可能にする点に関心が向けられています。

     現在の焦点は、AIの不正利用を防ぐことから、ますます高性能化するこの技術にどのような役割を与えるべきかという点に移っています。当時に、その利用者の認知発達への影響を懸念する声も多く上がっているのが現状です。

     今日私たちに求められているのは、深く理解し、分析し、整理し、意味づける力です。もし私たちが思考や創造をAIに委ねてしまえば、個人の自律性や自由意志、さらには自由そのものが揺らぐ可能性があります。本特集は、こうした根源的な問い、すなわち、「AI時代において、人間はなお考える必要があるのか」という問いを起点に置くものです。

     学ぶこと、考えることは、単に知識を得るだけでなく、人間として成長するプロセスそのものです。好奇心や社会性、批判的思考力を育むことは人間に固有の重要な営みであり、どれほど高度なAIであってもこれらを完全に代替できるものではありません。

     本特集の大きな魅力は、各国の具体的な事例を通して、この問題を多角的な視点から描き出している点にあります。

     数十年にわたって学校教育にICTを導入してきたスウェーデンでは、過度なデジタル化政策の見直しが進み、教育における技術と教育内容のバランスの重要性が再認識されています。一方、アラブ首長国連邦では、2025年に幼稚園からAIを必修科目に位置づけ、活用能力だけでなく、それを批判的に捉える力の育成を目指しています。また、アルゼンチンで2025年に実施された教員対象調査では、AI導入に伴う教員研修に対する関心や意欲と同時に、自分たちの働き方を変えざるを得ない状況をもたらすことへの懸念の双方が浮き彫りにされました。さらに、中国南西部の山岳地帯に位置する貴州省では、人間中心のAIイニシアチブが教育のあり方を変革しつつあり、子どもに「答えを与える」のではなく「考えさせる」ためのAIの活用が進められています。

     これらの事例に加え、本特集では、子育てにAIを活用するというインドでの新しい動向の紹介や、主要言語で記述されたコンテンツをベースとして開発された生成AIがハウサ語やズールー語などのアフリカ諸語での活用に十分対応し切れていない現状に関する記事も掲載されています。

     本特集は、「AI時代において、人間はなお考える必要があるのか」という問いに対して、単純な結論を提示するものではありません。学ぶこと、考えること、そして人間として成長することの意味をあらためて見つめ直す契機として、示唆に富む内容となっています。

     残念ながら日本語版は発行されていないのですが、こんな時こそ、AIの出番ですね。優れた翻訳機能を備えた様々なAIが活用可能ですので、是非、多くの方にお読みいただきたいなぁと思いました。


バナースペース

藤田晃之

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