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キャリア教育 よもやま話Just Mumbling...

第4話 カリキュラム・マネジメントと「SMART」な目標設定 (2016年9月4日)

  •  今回のお題は、「カリキュラム・マネジメント」です。

     カリキュラム・マネジメント?? なんだそれ? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。横文字をいくつも使って読み手・聞き手を煙に巻くのは、「二流・三流の大学教員あるある」ですが、今回は、そういった戦略を使おうとしているわけではありませんのでご安心下さい。(いや、自分は「二流・三流」じゃないと、抗弁しようとしているわけではないのです…。)

     すみません。みっともない自己弁護はやめて、さっさと本題に入りますね。

     で、カリキュラム・マネジメントなのですが、実は、次の学習指導要領における焦点のひとつなのです。例えば、先日(8月19日)に開催された中央教育審議会の「教育課程部会教育課程企画特別部会」第20回会議では、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ(案)」が議論の対象となっていました。当該「審議のまとめ(案)」では、「教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す『カリキュラム・マネジメント』の実現」が、重要な柱のひとつとなっています。

     もちろん、次期学習指導要領の改訂の方向性については、この「審議のまとめ(案)」がいきなりポンと示したわけではありません。2014(平成26)年11月、文部科学大臣は中教審に対して、次期学習指導要領改訂のための審議開始を求めたのですが、そこですでに「学習指導要領等の理念を実現するための、各学校におけるカリキュラム・マネジメントや、学習・指導方法及び評価方法の改善を支援する方策」が、中心的審議事項の一つとされています。

     また、昨年(2015・平成27)年8月には、「教育課程部会教育課程企画特別部会」が、改訂のための「論点整理」を取りまとめており、そこでは「学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」の筆頭に「『カリキュラム・マネジメント』の重要性」が挙げられました。この「論点整理」においては、カリキュラム・マネジメントの定義とも言える記述がなされています。引用してみますね。

    教育課程とは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり、その編成主体は各学校である。各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められる。

     つまり、①各学校が児童生徒や地域の実情を踏まえた上で独自の教育目標を設定し、②その目標の実現のために、教科横断的な視点で教育の内容を組織的に配列して教育課程を編成し、③それに基づいた教育を実践し、評価し、改善を図ることが求められているわけです。

     かいつまんで言えば、学校ごとのPDCAサイクルの確立がカリキュラム・マネジメントの肝と言えるでしょう。無論、そのためには、教育内容と教育活動に必要な人的・物的資源等を学校外の資源も含めて活用していかなくてはもったいない。「社会に開かれた教育課程」を目指す次期学習指導要領において家庭や地域社会との連携は一層重要となりますし、キャリア教育の実践にあたっては不可欠な要素と言っても言い過ぎではありません。

     …なーんだ、今回のお題は、結局「第3話 キャリア教育とPDCAサイクル」の焼き直しってこと?

     …あ、バレました? 実は、意識して同じようなテーマを繰り返しています。

     一昨日(9月2日)まで、本年度第2回「キャリア教育指導者養成研修」に講師の一人として参加していたのですが、そこでも、カリキュラム・マネジメント(≒学校ごとのPDCAサイクルの確立)の基盤となる教育目標の設定がうまくいかない現実を痛感してきました。

     例えば「○学年で身につけさせたい力」については、「企画する力」「コミュニケーションの力」「学ぶ力」等々の「総称(一定のカテゴリー)」になってしまうグループが多く見られました。身につけさせたい力が抽象的ではっきりしないので、教育活動のどこで実践すればよいかについても焦点化できず、それらの力が身についたか否かを評価・検証しようとしても困ってしまうという問題に、いくつものグループが直面していました。

     「コミュニケーションの力」といっても、「大勢の前で堂々と話せる力」なのか、「いわゆる“報・連・相“ができる力」なのか、「緻密な論理が展開できる力」なのか、「誰とでも愛想良く話せる力」なのか、「自分とは異なる意見にも真摯に耳を傾ける力」なのか…。これらがはっきりしないと、「P(計画)」に続く、「D(実践)」「C(評価)」「A(改善)」がストップしてしまいます。あるいは、「コミュニケーションの力」のような幅広く抽象度の高い目標のまま、むりやり突っ走っていくと、「D(実践)」について「あそこでもできる」「ここでもできる」…となり、結局、今までやってきた普通の教育実践と何も変わらないじゃないか、という結論に至ることとなるでしょう。そうなってしまうと、「今まで通りでOK」ですから、「C(評価)」も「A(改善)」も必要のないものに成り下がります。

     で、今回の研修で、僕が「経営コース」の皆さんに対して、ひとつのヒントとしてお示ししたのが「SMART」な目標設定です。

     これは僕が考え出したものでは全くなくて、経営コンサルタントさんなどの業界では、極めて頻繁に使われる考え方です。ネットで「目標」「SMART」の2語を検索語にして検索していただくとドドッと情報が得られますし、いくつかのバリエーションもありますが、ご参考までにまとめてみます。

    目標設定は「SMART」に!
    S Specific(スペシフィック)→具体的に・焦点化して
    M Measurable(メジャラブル)→測定・検証可能な言葉で[※メジャー=測定する]
    A Achievable(アチーバブル)→頑張れば達成できるレベルで[※アチーブ=達成する] 
    R Realistic(リアリスティック)→現実に即して
    T Time-bound(タイム・バウンド)→いつまでに達成するのかを明確に

     もちろん、目標を「SMART」にしても、それだけで事がうまく運ぶはずはありません。その前提となるのは、「目の前のこの子たち」の資質・能力、とりわけ「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等)」に関する力を伸ばしたい!という先生方の願い、あるいは、伸ばさなければ!という先生方の使命感であることは自明です。その願いや使命感を「形」に示すとき、SMARTの考え方が少しでもお役にたてば幸いです。

     今回は、カリキュラム・マネジメントだの、SMARTな目標設定だの、横文字が続きました。うーん、やはり二流・三流の大学教員のクセかもしれません。お恥ずかしい限りです。

     多くの小学校・中学校・高等学校等では夏休み明けのご多忙な毎日かと存じます。新たなアジェンダやイシューの多いこの時期にあっても、皆様がクリエイティブな教育活動を重ね、子供たちのエンパワーメントにコミットなさることをお祈りしています!!


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藤田晃之

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