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キャリア教育 よもやま話Just Mumbling...

第14話 キャリア教育の18年の歩みを振り返る(2017年1月29日)


  •  昨日の朝刊に国立大学の入試倍率一覧が掲載されました。いよいよ本番ですね。受験生の皆さん、体調管理にも十分留意しつつ頑張って下さい!

     ふと気づいたのですが、日本でキャリア教育の推進が提唱されたのは1999(平成11)年12月なので、人間に例えれば今年で18歳。つまり、この4月から高校3年生になるわけです。ちょうど今頃、「君たちもいよいよ受験生なんだよ!」と高校の先生方から発破を掛けられているタイミングなんだなぁと思いました。18年前に身長50cm、体重3kg程度で生まれた「キャリア君」がいるとしたら、今や彼の身長は171cm、体重は64kgになっているという計算です(いずれも平均値)。まさに、光陰矢の如し。18年間で人はここまで大きくなるのですね。(ちなみに、僕自身の身長もほぼこんな感じですが、体重はこの数値より10kg弱多い…我が身の「光陰矢の如し」も実感せざるを得ない状況です。)

     提唱後、18年を経る中で、キャリア教育の焦点や役割は大きく変化して今日に至っています。社会自体が急速に変貌を遂げ、学校の教育課程編成の基準としての学習指導要領も改訂を経ているわけですから、キャリア教育だけが変容しないとしたら、そのほうがむしろ奇異な現象と言えるでしょう。けれども、先生方の間では意外に「18年前のキャリア教育」のイメージが強く残っているようです。18年前のまま、とまではいかないにせよ、10年程度前のキャリア教育の残像が瞼に焼き付いている先生方は少なくないのが現状かもしれません。

     実は、先日、全国規模の教員研修の一部を担当させていただき、「キャリア教育の一層の充実のために」というタイトルで講義と演習を行いました。つい数日前、当該研修の主催者である教員研修センターから、受講してくださった先生方の感想が送られてきました。以下、原文のままいくつかを紹介します。

    • 草創期のキャリア教育と今日のキャリア教育との違いがよくわかりました。これまで、草創期の捉えのままだったことがわかり、現場に広めなければと思いました。
    • キャリア教育とは、職場体験等だけではなく、もっと広く捉えて実践を行うことがわかりました。きっと誤解している先生方は多いはず・・・
    • キャリア教育とは何か何度も聞いていたのですが、職場体験や進路のこととばかり思っていた。そうではなくて今やっていることが将来につながることを子供たちに伝えていかなければならないことがわかった。


     何事も「第一印象」は大切だと言われますが、キャリア教育についても提唱時の印象がずっと尾を引いているのだなぁと改めて思った次第です。

     そこで、今回のお題は「キャリア教育の18年の歩みを振り返る」としました。「第8話 キャリア教育と進路指導」に続いて、基礎的事項の速習おさらいシリーズ第2弾です。

     日本の教育行政分野の公的な文書で「キャリア教育」という言葉を初めて使用したのは、1999(平成11年)に中央教育審議会が取りまとめた「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」でした。当該答申の「第6章 学校教育と職業生活との接続」において、次のように指摘されていたことは重要です。ここでの指摘が、後々、「キャリア教育」と言えば、「ニート・フリーター対策」と理解されるようになった主たる背景になっているといえるでしょう。 

    新規学卒者のフリーター志向が広がり、高等学校卒業者では、進学も就職もしていないことが明らかな者の占める割合が約9%に達し、また、新規学卒者の就職後3年以内の離職も、労働省の調査によれば、新規高卒者で約47%、新規大卒者で約32%に達している。こうした現象は、経済的な状況や労働市場の変化なども深く関係するため、どう評価するかは難しい問題であるが、学校教育と職業生活との接続に課題があることも確かである。

     それゆえ、本答申は、「学校と社会及び学校間の円滑な接続を図るためのキャリア教育(望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育)を小学校段階から発達段階に応じて実施する必要がある」と指摘したわけです。「キャリア教育=ニート・フリーター対策=勤労観・職業観の育成」という「草創期におけるキャリア教育3点セット」は、このようにして提示されました。

     確かに、当時、フリーターと呼ばれる若者の数の急増に大きな関心が集まっていたことは事実です。具体的には、1982年において50万人であったフリーターが1997年に150万人を超えるに至り、文字通り社会問題になっていたのです。また、若年無業者(ニート)の数も、1990年代前半まではおよそ40万人台で推移していたのですが、1999年に48万人、2002年には64万人と急激に増え、こちらにも注目が集まりました。

     上述のようなキャリア教育の推進が提唱されたのは、まさにこのタイミングです。急速に増えるフリーターやニートに対して何らかの対応策が強く求められる中で、当時のキャリア教育は社会的な要請に応える形で提唱されたと言えるでしょう。草創期のキャリア教育は、若年者雇用をめぐる新たな問題への緊急対応策として登場したと言っても度を過ぎた誇張表現ではないと思います。

     無論、このようなキャリア教育の提唱が、小学校・中学校・高等学校の先生方から必ずしも歓迎されなかったことは、多くの皆さんが記憶されているとおりです。小学校・中学校の先生方の多くは、「ニート・フリーター対策なら、高等学校でやってくれ」と思っていました。しかも、当の高等学校においても積極的に迎えられたわけではないのです。特に、いわゆる進学校と見なされる高等学校においては、「うちの卒業生はちゃんと進学して、その後もちゃんと就職している。だから、キャリア教育なんて必要ない」という意見が多くを占めていました。大半の先生方にとって、できれば関わりたくない余計な仕事としてのキャリア教育が登場したと言えるのかもしれません。

     通常、中央教育審議会からの答申を受けた文部大臣は、その答申内容を尊重しつつ、具体的な施策を打ち出します。これは、現在の文部科学大臣も同じです。中央教育審議会の答申というのは、それほど大きな意味をもつものなのです。けれども、上掲の1999年の答申におけるキャリア教育の推進は、すぐに施策化されたわけではありません。なぜなら、ニート・フリーター問題への対応を、教育行政を担う文部省単独で行っても実質的な効果を期待することができないからです。雇用をめぐる施策を担当する当時の労働省、中小企業の振興等をはじめとして企業への指導・支援を担う当時の通商産業省との連携がどうしても必要だったと言えるでしょう。

     当然、文部省は労働省、通商産業省との連携の方途を摸索し始めます。けれども、中央省庁再編の大きな動きに巻き込まれ、3省連携の実現は簡単には進みませんでした。結局、2001(平成13)年の改組を経て、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省連携によるニート・フリーター対策の方向性が示されたのは、2003(平成15)年6月の「若者自立・挑戦プラン」においてでした。

     この「若者自立・挑戦プラン」が示された2003年、フリーターの数は217万人にのぼっています。このような状況を視野に収めれば、当該プランの冒頭が次のように書き出されていることに違和感を持つ人は多くないはずです。

    ○今、若者は、チャンスに恵まれていない。高い失業率、増加する無業者、フリーター、高い離職率など、自らの可能性を高め、それを活かす場がない。

    ○このような状況が続けば、若者の職業能力の蓄積がなされず、中長期的な競争力・生産性の低下といった経済基盤の崩壊はもとより、不安定就労の増大や生活基盤の欠如による所得格差の拡大、社会保障システムの脆弱化、ひいては社会不安の増大、少子化の一層の進行等深刻な社会問題を惹起しかねない。

     このような認識の下で、「若者自立・挑戦プラン」は「教育段階から職場定着に至るキャリア形成及び就職支援」の重要性を指摘し、「勤労観・職業観の醸成を図るため、学校の教育活動全体を通じ、子どもの発達段階を踏まえた組織的・系統的なキャリア教育」を推進すると宣言しています。「キャリア教育=ニート・フリーター対策=勤労観・職業観の育成」という「草創期におけるキャリア教育3点セット」が、ここでも再び示されたと言えるでしょう。

     「こんなキャリア教育なら、高校でやればいい」と小学校・中学校の先生方が思い、普通科高校、特に進学校の先生方の多くは「いや、うちの卒業生はちゃんと進学して、その後もちゃんと働いているんだからうちでは必要ない」と捉え、専門高校の先生方は「うちでは、こんなことは昔っからずっとやってきている。今さら、何を言っているんだ?」と首をかしげる……。日本に住む大人としては、ニート・フリーターの増加に危機感や違和感を強く抱きつつも、教員として「うちの学校でやる」ことには賛同しかねるキャリア教育。「若者自立・挑戦プラン」は、その意図とは裏腹に、このようなキャリア教育のイメージを一層強化してしまったのかもしれません。

     そして、2005(平成17)年、このような「みんなにとってのお荷物」としてのキャリア教育のイメージをガラッと変える動きがありました。

     文部科学省によって、単年度当たり4億5千万円もの予算をつぎ込んで実施された「キャリア教育実践プロジェクト」の登場です。このプロジェクトは「中学校における5日以上の職場体験活動の実施(キャリア・スタート・ウィーク)」を中核に据え、その後4年間、文字通り全国展開されたのです。

     これまで「小学校でニート・フリーター対策をするのは早すぎる」と思っていた小学校の先生方にとってはもちろん、「うちでは必要ない」と思っていた普通科進学校の先生方にとっても、「そんなものは以前からやってきた」と自負されていた専門高校の先生方にとっても、「ほら、やっぱり、うちでキャリア教育なんてものを改めてやる必要はなかったじゃないか」と“納得がいく”施策であったと推測します。

     無論、ここで「逃げ場」を失ったのは中学校の先生方です。もはや「やるしかないキャリア教育」が、職場体験活動という具体的な方策を伴って提示されました。しかし同時に、「結局、職場体験活動をやればいいだけじゃないか! 職場体験活動さえやっておけば無罪放免なんだな」という曲解さえ許容しかねない施策であったと言えるでしょう。

     それにしても、文部科学省が「小学校段階から発達段階に応じて実施する」という方策から、「中学校における職場体験活動を焦点化する」方策へ、突然舵を切ったのはなぜなのでしょうか。

     もちろん、それには理由があります。

     当時、「キャリア教育」という新たな言葉そのものに違和感をもつ先生方が少なくなかったことに加え、キャリア教育は多くの先生方にとってできれば関わりたくない存在でもあったわけですが、それを一気に進め得るだけの起爆剤が何としても必要でした。「ニート・フリーター対策」が国家的な課題であったにもかかわらず、文部科学省としての対応施策が後手に回ることは避けなくてはなりません。また、この重要な局面にあって、キャリア教育推進施策の第一弾が失敗することは許されない状況です。

     そこで文部科学省が注目したのが、兵庫県における「トライやる・ウィーク」でした。阪神淡路大震災や中学生による連続児童殺傷事件を経た兵庫県では、「心の教育」の充実を図ることの大切さを再認識し、「従来のように結論を教え込む」方策から「体験を通して、子どもたちが自分なりの生き方を見つけられるよう支援していく教育にシフトしていく」ための一環として、1998(平成10)年度から「トライやる・ウィーク」、具体的には、県内全ての公立中学校2年生全員が、実社会において職場体験活動や勤労生産活動等に取り組む活動を実施しています。しかも、兵庫県ではすでに、「トライやる・ウィーク」を通して、不登校生徒の登校率の上昇、自己肯定感や自己有用感の向上、人間関係の円滑化、学ぶことや働くことへの理解の深化など、具体的な成果を得ていました。(詳しくは、兵庫県「トライやる・ウィーク」評価検証委員会(2008)『地域に学ぶ「トライやる・ウィーク」10年目の検証(報告)』をご参照下さい。)

     文部科学省として、キャリア教育推進のための最初の施策を実施するに当たり、このような先行成功事例を見過ごすはずはありません。こうして、キャリア教育推進の第一弾として「キャリア・スタート・ウィーク」が開始されました。

     当然のことながら、このような施策を推進すれば、「キャリア教育は中学校で行うもの」という誤解が生まれることが懸念されますし、「実質的には職場体験活動を指す」という曲解を生む危険性さえ生じます。でも、当時は、何としても「ニート・フリーター対策」を前に進めざるを得なかったのです。これによって生じた誤解や曲解は、第二弾・第三弾と続くキャリア教育推進施策によって是正することが企図されていました。

     もちろん、その構想通り、第二弾・第三弾に相当するキャリア教育推進施策として、各種の手引きやパンフレットの発行、実態調査に基づく現状把握とその是正促進措置などが講じられてきたのですが、2009(平成21)年の「事業仕分け」等の影響もあり、それぞれに充てられた予算は大きく制限されました。豊かな予算の下で推進された「キャリア・スタート・ウィーク」によって形成されたイメージを払拭するまでには至っていないのが今日の状況なのかもしれません。

     さて、ここで一旦、これまでの流れを振り返ってみましょう。

     キャリア教育はニート・フリーター対策であり、勤労観・職業観の育成を主軸とするもの。……このような捉え方は、今年、18歳を迎えようとする「キャリア君」が生まれたばかりの時から、4歳~5歳頃までの特徴です。「あなたは幼稚園のころ、よく○○したわよねぇ」と言われて、18歳の青年が戸惑うのは世の常ではないでしょうか。

     キャリア教育は、実質的に中学校の職場体験活動を指す。……これは「キャリア君」が小学校低学年から中学年くらいまでに特に目立った特徴でした。「おまえは小学校の頃、○○だったよなぁ」と言われても、その後「キャリア君」は中学、高校と様々な経験を経て成長を遂げていますから、当時の面影がそのまま彼に残っているとは限りません。

     2011(平成23)年1月に中央教育審議会が取りまとめた答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」では、「キャリア教育の必要性や意義の理解は、学校教育の中で高まってきており、実践の成果も徐々に上がっている」としつつ、「(キャリア教育についての)一人一人の教員の受け止め方や実践の内容・水準に、ばらつきがあることも課題としてうかがえる」と指摘しています。これに続いて答申が、「このような状況の背景には、キャリア教育のとらえ方が変化してきた経緯が十分に整理されてこなかったことも一因となっていると考えられる」と述べていることは重要ではないでしょうか(pp.17-18)。つまり、「キャリア君」は変化しているんだよ! 今の「キャリア君」の姿をちゃんと見てね! ということですね。

     2011年の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」が発表されてから後のキャリア教育の姿、つまり、小学校高学年から18歳を目前に控えた「キャリア君」の成長については、僕がここで駄文を書き連ねるよりも、コンパクトにまとまった資料をご覧いただいた方がいいかもしれません。A4判2ページ見開きにまとめられているので、読みやすいと思います。
    「【資料】キャリア教育の新たな方向性」(国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター(2011)『小・中・高等学校における基礎的・汎用的能力の育成のために』pp.14-15)

     ちなみに、この「【資料】キャリア教育の新たな方向性」を読んでいただく際の前提として重要なことを3点だけ挙げておきますね。

    1)キャリア教育は「ちゃんと職に就かせる」ことのみを支援する教育活動ではない。社会に参画して生きていくために必要な幅広い力を育成することがキャリア教育のねらいであり、それは、いわゆる「4領域8能力」から「基礎的・汎用的能力」に変容して今日に至っている。
    →この点について更にご関心がある方は「よもやま話 第5話 金太郎飴」もどうぞ!

    2)知識基盤社会やグローバル化の一層の進展が見られる中で、「基礎的・汎用的能力」において求められる「今後の成長のために進んで学ぼうとする力」や「学ぶこと・働くことの意義の理解」、及び、「人間関係形成・社会形成能力」としてまとめて示された諸能力の育成はますます重要になる。この点については、次期学習指導要領において重視される「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」とも大きく重なる部分である。
    →この点について更にご関心がある方は「よもやま話 第12話 中教審答申がキャリア教育に期待するもの」もどうぞ!

    3)キャリア教育が提唱された当初、社会問題となっていたフリーターやニートはいずれも増加しておらず、むしろ減少傾向にある。また、その内実は大きく変容してきており、「新規学卒者のフリーター志向やニートの急増」をキャリア教育推進の理由として挙げることは時代錯誤とさえ言える。

     これら3点はいずれも極めて重要なポイントなのですが、とりわけ「3」については、今日のキャリア教育の姿を正しく理解する上で不可欠だと思います。(以下、内閣府(2015)『平成27年版 子供・若者白書』における第1部第4章第2節「若年無業者、フリーター、ひきこもり」に示されるデータに基づいて概要を整理します。)

     まず、フリーターについてですが、2003(平成15)年に217万人とピークを記録して以来、2008年まで減少し続け171万人までその数を減らしました。その後、170万後半から180万前半までの増減を繰り返し、2014(平成26)年には179万人となっています。特に、15歳~19歳に限定してみれば、2003年に119万人だったものが、2014年には73万人と大きく数を減らしています。現在、フリーター問題の中心は、いわゆる「年長フリーター」(25歳~34歳)の増加、つまり、「フリーター志向」が実態としてあった頃にフリーターとして職業人生をスタートさせ、正社員への移行ができずにフリーターに滞留している層の増加にあるのです(第1-4-15図)。

     また、ニートについては、「若年無業者(15~34歳の非労働力人口のうち,家事も通学もしていない者)の数は,平成14(2002)年に大きく増加した後,おおむね横ばいで推移している。平成26(2014)年は56万人で,前年より4万人減少した。15~34歳人口に占める割合は長期的にみると緩やかな上昇傾向にあるが,平成26年は2年連続で低下して2.1%となっている。年齢階級別にみると,15~19歳が8万人,20~24歳が14万人,25~29歳が16万人,30~34歳が18万人である」と述べられている通り(p.38)、2002年以降の増加は確認されておらず、「おおむね横ばい」というのが現実です。むしろ、2012年以降に限れば、連続で減少して今日(このデータでは2014年)に至っています。また、15歳~19歳に限定した場合、8万人という数値が2002年以降の最小値であることも重要でしょう。現在のニート(若年無業者)の中心は、25歳以上の「年長ニート」にあるのです(第1-4-13図)。

     このようなデータは、ちょっとネット検索をすれば誰でもすぐに入手できます。けれども、各種のキャリア教育関連の教員研修にお邪魔すると、冒頭の「ご挨拶」の部分で、「現在、若者のフリーター志向が指摘され、ニートと呼ばれる若年無業者が急増する中で、キャリア教育の必要性がますます高まっております」というような一節がマイクを通して会場に響き渡ることが、今日でもなお少なくありません。

     その「ご挨拶」を舞台袖で聴いている身としては、「違います! フリーター志向もニートも増えていませんからぁぁ! 残念!」と叫びたくなる衝動に駆られます。(どういうわけか、このときだけは、かつて人気を集めた波田陽区さんの「ギター侍」風の言い回しが、口をついて出そうになります。)さすがに僕も大人になったので実際には叫びませんし、研修中それに触れることもしませんが、悲しいなぁとは思います。もうすぐ18歳となる「キャリア君」本人も、幼稚園時代のエピソードばかり紹介されていると、「勘弁して下さいよ」と言いたくなるかもしれませんね。 


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