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キャリア教育 よもやま話Just Mumbling...

号外 数学は役に立つ! Maths counts ✔(2023年1月13日)

  •  今回は「号外」として、ユネスコが発行している機関誌The UNESCO Courierの最新号(January-March 2023)の紹介を致します。本号の特集タイトルは「数学は役に立つ(Maths counts)」です。「学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていく」というキャリア教育のねらいともまさに重なる特集です。

     以下、編集長であるAgnès Bardon氏による巻頭言の一部を翻訳して引用します。

     中学生・高校生のみならず一般の方々も、数学を、抽象的で威圧的でトラウマになる(心に傷を負わせる)ようなものとして捉えています。多くの人たちにとって数学は現実から切り離された純粋理論的な学問にしか見えませんし、数学が必ずしも肯定的な評価を得ているとは言えません。けれども、現実は全く異なります。数学は私たちの日常生活の中に遍在しているのです。

     例えば、人工知能の中核であるアルゴリズムは、検索エンジンを成立させ、医療用画像診断を可能にしました。また、数理モデルは、交通網の最適化、台風(サイクロン)の進路予測、伝染性疾患の拡大抑制、予防接種キャンペーンの効果測定など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。(中略)

     このように数学はあらゆるところに存在しているのですが、多くの人がそこから排除されていることも事実です。この学問をめぐる問題は未だに数多く残されています。まず挙げられるのは、男女格差でしょう。イランの女性数学研究者マリアム・ミルザハニ(Maryam Mirzhakani)氏がフィールズ賞を受賞したのは、2014年になってからのことです。(中略)世界の初等・中等教育段階における数学の成績上位者は依然として女子よりも男子が多いのが現状ですし、卒業後も、女性は男性に比べて自然科学分野のキャリアを選択できるという自信を必ずしも十分に有しているとは言えません。

     さらに、数学分野においては専門職の需要と供給のバランスも崩れています。例えば、正規資格を持つ数学教師の採用ニーズはかつてないほどに高まっていますが、その数は世界中で不足しており、これは私たちの未来に対する脅威とも言える状況です。また、この学問の応用範囲は、本来のあるべき姿から見れば未だに限定的です。気象や生物多様性、医学研究に役立つはずの数学モデルの応用は、依然として金融や経済学の分野に限られているのが現実です。世界が社会的にも、気候変動の側面でも、テクノロジーの分野においても様々な課題に直面している今、数学の力をより深く探求し、より広く共有することが極めて重要なのです。


     全国の中学校・高等学校の数学の先生が、今、授業で扱っていらっしゃる単元のまとめに際に、ほんの数分間「ユネスコの機関誌の最新号に書いてあったんだけど……」と、この特集号の一部をご紹介くださることを祈っています。
    Web版=https://courier.unesco.org/en/latest
    PDF版=https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000384081_eng

     The UNESCO Courierは英語で書かれた機関誌ですが、特集号中のイラストや図表、写真だけでも、生徒の皆さんへの意味あるメッセージになると思います。(もちろん、数学と私たちの生活との密接な繋がりについて書かれた日本語の本も数多く公刊されていますので、それらをご活用いただく方策も是非ご検討ください。)

     「数学なんて何のためにやっているんだろう」と砂を噛む思いで授業に臨んでいる中学生や高校生が、「合格切符」を勝ち取ることだけを目指して我が身に鞭を打つようにして数学と格闘する受験生が一人でも減ることを心から願っています。


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藤田晃之

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